リスペクトから生まれる、新たな視点。 2つのオンラインイベントを開催した高校生が感じたこと
参加者募集ページが公開されるやいなや、あっという間に定員に迫る勢いで参加申し込みが殺到したカタリバオンライン for Teens(以下、カタリバオンライン)のイベントが「日本の未来を『政治・経済』の視点から考えよう」です。このイベントの主催者は、なんと高校生! 大学進学が決まり、今もなお自分の中にはない視点を追い求め続けている高校3年生のメイメイさんが企画から手掛けました。
正直イベントを1から作りあげていくのは、大変です。しかしメイメイさんはカタリバオンラインだけでも、このイベントとプログラム卒業課題の2つのイベントを成功させています。なぜイベントを開くのか――。その理由をメイメイさんにインタビューしたら、イベントだからこそできる「伝え方」「伝わり方」が見えてきました。
メイメイさんプロフィール
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全く異なる2つのイベント 気づきのタネは日常の中に
▲今回インタビューに協力してくれたメイメイさん
―― メイメイさんは先日、カタリバオンラインのいちプログラムとして「日本の未来を『政治・経済』の視点から考えよう」というオリジナルイベントを開催しましたよね。このオンラインイベントをしようと思ったのはなぜですか?
このイベントを開催する前に参加したイベントプロデュースコースで、イベントの開催方法を学ぶのとは別に、SDGSや貧困、格差について同期メンバーと雑談する機会があったんです。この時間が楽しくて……。コースが終わるころには、同世代と政治のことを語り合いたいと、歯がゆさすら抱いていました。
そんな思いを抱いていた私に、「高校生オリジナル企画」というイベントプロデュースコース修了生向けのステップアップの機会があると案内が届いたので、ぜひやってみたいと挑戦することにしました。
▲メイメイさんが実施したオリジナルイベントのスライド
―― イベントプロデュースコースでも政治、経済に関するテーマを設定したのでしょうか?
それが全く違う、「リメイク」をテーマにしたイベントをしたんですよ。もともと私は裁縫が好きだったのですが、その過程で無駄なゴミの量を減らし(リデュース)、再利用し(リユース)、使用済みのものを資源に戻し新たなものを作る(リサイクル)という「3R」という考え方、行動指針に触れ、気に入って着倒した服を別の形で蘇らせる「リメイク」の楽しさを知りました。もう服としては着られないものにも「捨てる」以外の選択肢があり、思った以上にいろいろな形に変えられる面白さを広めたかったんです。
▲メイメイさんが「イベントプロデュースコース」で開催したリメイクイベントのスライド
ちょっと尖った企画も、オンラインイベントなら挑戦しやすい
―― 実際にオンラインでのイベントをしてみてどうでしたか?
オンラインイベントでは、とてもフラットな時間が作れると感じました。実は以前、対面でのイベントをしたことがあります。その時は学校や県のサポートを受けながら、高校生の学びに地域の人が触れられるような展示をしました。そのイベントがコロナ禍で交流を生み出すのが難しかったという部分もあるとは思いますが、コースや自主企画で実施したオンラインイベントでは対話をメインに会を進めることができたため、企画側と参加側の垣根のない時間が作れたと思っています。
またオンラインイベントは対面式のイベント以上に、自分の興味関心に沿った、ちょっと尖った内容にも挑戦できる可能性があるとも感じました。なにより全国の人と繋がれるのが魅力ですね。住んでいる地域以外の人との出会いが、新たな発見を届けてくれました。
▲メイメイさんのイベントスライドの一部。
―― 実際にどんな発見がありましたか?
まず、参加してくれた人たちが私の想像以上のリアクションをしてくれたことに、正直驚きました。イベントプロデュースコースの卒業課題である「リメイク」のイベントでは、20分という限られた時間にもかかわらず参加してくれた人から「学校のイベントで作ったクラスTシャツをバックやシュシュにする」というアイデアが出てきましたし、オリジナル企画では参加者一人ひとりが自分の持ち時間をはるかにオーバーして日本の国家予算について考えたことを語ってくれました。自分の中にない視点が増えたと思います。
またオリジナルイベントに関しては、予想の倍の参加申込がきたことにも驚かされました。申込を担当してくれていた運営の人からその日のうちに「8人(申込が)来たよ」と連絡が届いて。若者は政治に興味がないと言われることもありますが、そんなことはないんだと実感でき、イベント開催に向けて熱意がさらに加速しました。
▲メイメイさんのイベントスライドの一部。参加者同士のコミュニケーションも盛んだったよう
イベント開催は意外とハードルが高くない? リスペクトし合える時間が生み出すもの
―― カタリバオンライン以外の場でもイベントをしてきたメイメイさん。メイメイさんがイベントを開く原動力についても教えてください。
イベントって、企画者だけでなく参加者もテーマを「自分ごと」として考えることができる、濃密な時間が過ごせるんですよね。企画者の思いを伝える方法は他にもありますが、イベントの場合、その時間の中で参加者から何かしらのアクションが起こるんです。しかもその多くは「共感」「感想」どまりでなく、「自分ごと」として考えたり動いたりした結果なんですよね。
そこにいる人たちが自分ごととして考えられるのはきっと、伝える手段のなかでもイベントが「参加者と企画者が互いにリスペクトし合える時間」を作りやすいからだと思っています。実際に国家予算のオリジナルイベントは、自分の想定していた通りに進まなかったのですが、それは参加してくれた人たちから「そこまで考えていなかった」というリアクションをたくさんもらえたからなんです。参加者と企画者の間に垣根のない、互いの考えのすごさに圧倒されるリスペクトにあふれた濃密な時間が過ごせるところに、イベントの魅力を感じています。
▲メイメイさんが予定していたイベントの進行予定。思い通りに進まないこともまた面白い!
―― その時間の中で真剣に考え、自分の考えを言葉にしたりワークショップに参加できるのはイベントならではの強みですね! ただその分、準備も大変だったのではないでしょうか?
確かに準備は大変な部分もありました。私はイベントを企画するときに参加してくれる人が「これなら自分もできる」と思う内容を意識しています。そのために「分かりやすさ」が重要になってきます。その分かりやすさを生み出すためには、自分の中にそのテーマに関する知識を新たに蓄積するのはもちろん、どんな比較材料や情報を出すべきなのか、言葉を選ぶべきなのかを整理しなければなりません。ただここをしっかり練り込んで熱量を込めた分が、イベントの参加者のリアクションとして返ってきたと思っています。
▲リメイクイベントで使ったワークシート。自分で考える工夫があちこちに仕掛けられている
また今回、カタリバオンラインのイベントプロデュースコースに参加してみて強く思ったのは、イベントの開催は意外とハードルが低いということでした。コースの卒業課題で「リメイク」をテーマにしようと思いつつも「イベントになるかな」と不安に思っていたのですが、カタリバオンライン運営の人のリアクションが良くて、「これはいけるぞ」と(笑)。コースが始まってから言われていた「なんでもイベントになるよ」という言葉は本当だったんだと思えましたね。