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「食べられない社会」で自分にできることとは?/”問い”を育む 高校生たちの物語 #69

「”問い”を育む 高校生たちの物語。」は、カタリバオンライン for Teensで出会った全国の高校生の「未来」と「探究」を応援するインタビュー企画。

日常の小さな疑問や違和感、純粋な好奇心や”好き”から、迷いながら一歩ずつ「マイストーリー」を歩む高校生を紹介します。

 

Nagiさんプロフィール

滋賀県在住の高校3年生。模擬国連部の部長を務めながら4つの部活動に所属し、校外ではこども食堂でのボランティア活動に取り組む。小学校時代の自身の体験から「自分で変えられない要素で苦しむ人を支えたい」という思いを抱き、国際協力から食の分野へと関心を移していった。好きな食べ物は芋けんぴ。

 

行動してみてわかったこと——こども食堂から見つけた新しい夢

 

Q:今取り組んでいる探究活動/マイプロジェクトについて教えてください

 

現在、私は4つの部活動に所属していて、その中でも模擬国連部では部長を務めています。

でも、実は一番やりがいを感じているのは、校外で続けているこども食堂でのボランティア活動です。最初は、「自分が知らない日本の現実を見てみたい」という思いで参加したのですが、行ってみたら、そこは“支援の場”というより、誰にとってもあたたかい居場所でした。

活動を続ける中で、物価高の影響でメニューが減ってしまったことを知り、「自分にできることはないか」と考えるようになりました。そこで、地域の直売所を取材する機会を活かして店長さんに声をかけてみたところ、まだ食べられるのに撤去してしまう野菜を、こども食堂で活用することに快く協力してくださることになったのです。

この取り組みによって、今月のこども食堂のメニューはかなり豪華になりました。逆に「ちょっと多すぎるかも…」なんて声が出るくらいで、うれしい悲鳴でした。

▶︎Nagiさんの活動はInstagramでも発信中

「国際協力」から「食」への転換点

 

Q:探究活動/マイプロジェクトを通じて、どんな学びや変化がありましたか

 

私の関心は、実は「国際協力」から始まりました。小学生の頃に病気を経験したことがきっかけで、「自分では変えられない要素で苦しむ人たちの役に立ちたい」と思うようになったんです。発展途上国では、貧困や経済的な理由で教育を受けられない子どもたちがたくさんいると知り、その不平等さに強く興味を持ちました。

でも、高校2年生のとき、大きな転機がありました。ずっと信じてきたテーマに対して、ふと「なんか違うかも」と感じてしまったのです。その瞬間が、これまでで一番落ち込みました。ずっと信じていたものが揺らいで、自分が何を目指していたのか分からなくなってしまって。

そんな迷いの中で、2024年の夏、物価高のニュースを見ていたとき、ふとすべてが繋がったように感じたんです。野菜の価格が高騰したことから、「今、すでに日本でこんなに大変なんだから、他の国はどうなっているんだろう?」と考えました。ちょうど気候変動への関心もあったので、そこから「食料システム」の問題に自然と目が向くようになりました。

私は食べることが大好きで、だからこそ「食べられない社会」は絶対に嫌です。そして、ごはんには“見えない力”があると信じています。食べることは、ただの栄養補給ではなくて、心を動かしたり、誰かとつながったりできる、命の源だと思っています。

そんなときに出会ったのが、3万円の「探究奨学金」でした。ちょうど食に興味を持ち始めたタイミングだったので、その奨学金を使って、福井県の「吉川ナス」の取材に行くことにしました。市の職員の方が案内してくださって、農家さん、直売所、スーパー…いろんな人たちから話を聞く中で、食や農業の世界にぐっと引き込まれていきました。この旅が、自分の中での大きな出発点になった気がしています。

 

Q:これからどんなことにチャレンジしていきたいですか

 

今の夢は、国連のFAO(食糧農業機関)で働くことです。日本の食料自給率が低いこと、そして最大の輸入先がアメリカであることに興味があって、その関係性についてももっと深く学びたいと思っています。

いまはアメリカの大学進学を目指していて、出願書類の準備に追われる毎日。でも、やっぱり「現場を見たい」という思いが強くて、受験等が落ち着いたらスーパーや食料関係の最前線で実際に働いてみたいと思っています。

それから、農家さんの家に住んでお手伝いができるようなプログラムにも参加してみたいです。今は「知りたい」よりも「やってみたい」という気持ちが大きくて。体を動かして、現場のリアルに触れることで、食料システムの仕組みや課題を、自分の感覚として理解していきたいと考えています。

 

行動することで見えてきた世界

 

Q:今回カタリバオンライン for Teensに参加した理由を教えてください

 

最初に参加したのは中学生の頃でした。やりたいこと探しをしている時期で、何か立ち上げようとしており、その手がかりとして参加したのではないかと思います。やりたいこと探しの一環でした。

 

Q:カタリバオンライン for Teensに参加してどうでしたか

 

今回の参加で特に感じたのは、「人に伝える」ことの難しさでした。これまでは、“私”と“食”が自分の中で完結する関係だったので、ただ興味のままに深掘りしていればよかったのですが、「それをどう人に伝えるか」となると、一気に難しくなりました。

たとえば「食の安全保障」といっても、「それって何のこと?」とピンとこない人がほとんど。自分にとっては大切なテーマでも、相手にはなかなか届かない。そのもどかしさに何度も直面しました。

それでも、この経験を通して、「相手の立場に立って伝える」ことの大切さを実感しました。特に、高校生を対象に話すときは、同じ目線で、共通する実感や関心から入っていくことが必要なんだと気づきました。

 

Q:最後に全国の高校生へメッセージをお願いします!

 

最後に伝えたいのは、「とにかく行動してみてほしい」ということです。本を読んでみるとか、親にその思いを話してみるとか、本当に小さなことからでいいと思うんです。まずは、自分の中にある気持ちをアウトプットしてみること。それが一歩になると思います。

私も最初は、「こんなこと聞いていいのかな」と思いながらお店に声をかけたりしていたけれど、営業時間内に「教えてください」と言えば、意外とちゃんと話を聞いてくれる大人がたくさんいました。だから、行動するハードルをもっと低くしていいんだと思います。

無鉄砲でも、いろんなことをやってみたら、その中で「これかも」が見つかるかもしれないし、たとえ違ったとしても、「違った」と気づけること自体が大きな学びです。選択肢が1つ減るということは、自分の輪郭が少しはっきりするということ。だから、まずはやってみてください!

 

▼Nagiさんが実施した好奇心のトビラはこちら!▼

【好奇心のトビラ】 「日本の食の未来」について考えよう!(25年5月27日実施)